ロンドン北部にある自宅から近いこともあって、ハートフォードシャー州やエセックス州など、北の郊外にはよく車で出かけます。イングランド南部には高い山がなく、なだらかな丘陵や野原が続いていて、その中に美しい町や村が散在しています。イギリスは天気が変わりやすく、晴れた天気も長続きはしないのですが、流れ行く雲や光といった空の表情の変化が、かえって丘陵や野原をより魅力的なものにしてくれます。
イングランドの丘陵地帯をドライブしていると、意外と風車が多いのに驚かされます。風車というとオランダを思い浮かべますが、オランダの風車は主に干拓地の排水用で、大抵は水辺にあるようです。それに対してイギリスの風車は、ウィンドミル(Windmill)という言葉が表すように、風力による粉挽き機で、大抵は風の吹きやすい丘の上などにあります。今はあまり使われていないようですが、観光用に公開されているものもあります。
丘陵や野原には、春になると沢山の菜の花畑が見られます。幸運にも青い空に恵まれた日には、鮮やかな菜の花の黄色との対比がメルヘンのような世界を繰り広げてくれます。快晴とまではいかない日でも、流れる雲と光が壮大なドラマを繰り広げてくれます。私の出身地である長野県北部にも菜の花畑が多かったため、幼年時代の思い出とも結びついて、その感慨もひとしおです。
丘陵や野原には、やがて麦畑が目立つようになります。日本の田舎に水田が欠かせないように、イギリスの田舎に麦畑は欠かせないもののようです。そして夏の終わりには、取り入れの終わった野畑に、干し草の束ヘイスタックがいくつも転がります。長い冬に備えて家畜の餌を蓄えておくためのもので、人間と自然の共生を感じさせられます。それと同時に、俵型や直方体で並ぶ姿に、何と無くユーモラスな印象も受けます。
イングランド南部には高い山が無いため、冬でもそれほど沢山の雪は降りません。それでも時折はうっすらと雪が降り積もり、丘陵や野原を一面の銀世界に変えてくれます。秋が終わり、春がまたやって来るまでの、しばしの休息の季節といった感じです。
シリーズ第5弾は「丘と野に見る夢」と題して、ロンドン郊外の丘陵や野原の、季節による表情の変化、そして空模様による表情の変化を、24枚の写真と詩でお伝え出来たらと思います。
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『ぽえてぃっく ブリテン』写真詩集シリーズ
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